大切な人を亡くすほど、人生でつらいことはありません。
大切な人がこの世からいなくなる。
想像しただけで心がかきむしられるような思い・悲しみを感じるのではないでしょうか。
喪失感・悲しみ・怒り・不安…。それが「グリーフ(grief)」です。
グリーフには様々な症状があります。
理由もなく泣き出す。空しくて何事もどうでもよくなる。むやみに立ち回るようになる。
眠れない。
生前にしてあげられなかったことを後悔して罪悪感を覚えたり、
人生とは死とはといった問いを無限に繰り返したりすることもあります。
こうした状態の人に寄り添い支えることを「グリーフケア」といいます。
大切な人がいなくなったことを受け入れ適応して新しい人生を過ごせるように援助するのです。
かつては家族や地域コミュニティなど、グリーフケアを担う人が周囲にいることが
多い社会環境にありましたが、今日の社会では平均寿命の伸長、核家族化などにより
人々は死になじみがなく死にどう対処していってよいのか不安に思っています。
こういった環境の中で医師や看護師、宗教者、葬儀社、NPOなどで
グリーフケアの必要性が認識され、遺族自身や遺族を支えたい人々も
グリーフケアを学びたいという気運が高まっています。
葬儀には、一般的に友人親族が集い、その死が重要な出来事であることを
改めて共同体として認識します。
遺された者は公に安心して悲しむことのできる場を与えられ、
またその悲しみも共同体に認識されることとなります。
葬儀に参列した者は遺族に思いやりといたわりの気持ちを言葉であるいは態度で表現します。
また儀式では共に故人の霊が安心できるところへ導かれるように祈ります。
こういった環境の中で遺された者は周囲の人間もこの死の重大性を認めていることを感じ、
また周囲のサポートが得られるであろうという安心感の中にグリーフの第一歩を踏み出します。
日本での葬儀のうち多くが仏式で行われています。
仏式で葬儀を行った場合、故人が死亡してから数えて7日ごとに初七日、二七日、三七日、・・・
七七日(四十九日)までの忌日があり、最近は簡略化の傾向がありますが知人、遺族、
親族などが集まって焼香をあげたり僧侶にお経を読んでもらったりする供養を行います。
定期的に遺族を訪れ、故人について語るというグリーフケア的にも非常に意味のある
伝統と言ってよいと思います。
葬儀や儀礼が必ずしも華美や盛大である必要はありませんが
葬儀の意味を今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。
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